Tochimoto:Pinelliae Tuber

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Tochimoto-logo.gif出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌

半夏 (Pinellia Tuber)

Pinellia ternata Breitenbach:日本
Pinellia ternata Breitenbach:中国

半夏はサトイモ科のカラスビシャクPinellia ternata Breitenbachのコルク層を除いた塊茎を基原とする。生産期は5月中旬で、半分夏であることから「半夏」と言われるようになった。節季の七十二候に「半夏生(ハンゲショウズ)」の雑節があるが、これは半夏(烏柄杓:カラスビシャク)という薬草が生えるころを意味していることも興味深い。半夏は畑や田んぼの畔に多く自生しており、本草書に「守田」「水玉」の名があるのも理解できる。残念なことだが水田で農薬が使用されるようになり、野生品が減少している。 流通する半夏の多くは野生品の採集で生産されている。そのためか同じサトイモ科の「天南星」が混入することが多く、生薬の外部形態からは識別が難しいのが現状である。また古来、半夏は白くて大きなものが良品とされ、中国の生産では漂白を目的に硫黄燻蒸が一般的に行われており、SO2残留の安全性や、硫黄酸化物による大気汚染の問題があるため、当社では硫黄燻蒸を施さない「無硫半夏」を特別に生産し、「有硫半夏」と区別している。 (より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌

Contents

半  夏

『日本薬局方 15改正(JP15)』

  • 半夏:PINELLIAE TUBER
カラスビシャク Pinellia ternata BreitenbachAraceae)のコルク層を除いた塊茎と規定されている。

『中華人民共和国薬典2005年版』

  • 半夏:RHIZOMA PINELLIAE
半夏 Pinellia ternata (Thunb.) Breit. の乾燥した塊茎と規定されている。

『大韓薬典 第9改正』

  • 반하 半夏:PINELLIAE TUBER
반하 Pinellia ternata Breitenbach の塊茎で周皮を完全に除いたものと規定されている。

市場流通品と現状

戦前は日本国内でも採集されていたが、現在は北海道などで少量栽培されているに過ぎない。韓国から輸入されて流通したことはあるが、現在は中国産が市場を占めている。半夏の等級は粒の大きさで特級(150-180粒/500g)、甲級(350-400粒/500g)、乙級(700-800粒/500g)、丙級(1350-1500粒/500g)、珍珠(1500粒以上/500g)の5段階がある。それ以外に粒度選別をしない統庄品も市場には流通する。 調剤用の半夏は伝統的に○切り加工される。これは原形の規格がわかることと、表面積を大きくし抽出効率を増やすためである。

生産加工状況

半夏は乾燥すると周皮がはがれにくいため、一般的には採集した農家が新鮮な時に皮を去り、乾燥して加工場、購買所で取引を行う。

輸出用選別

輸出規格は周皮が完全に除かれ、変色していないものとされている。農家での皮去りは不十分であり、水洗兼研磨機では完全に周皮を去ることができないため、目視選別が必要となる。当然、粒度の大きい甲・乙級などと珍珠では時間あたりの選別重量が異なるため、珍珠規格の選別加工賃は割高に設定されている。選別作業員の賃金は出来高支払い制により、選別の精度に問題はなく、選別速度は速い。

中国の半夏栽培

半夏は四川省、甘粛省、雲南省、貴州省、湖北省、湖南省など各地で小麦の収穫後に生産されていたが、農薬使用の拡大にともなって生産量は減少している。現在、半夏の価格上昇によって甘粛省、四川省などで栽培が進んできているが生産量はまだ少ない。

理化学的品質評価

産地別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)
産地 検体数 灰分
3.5%以下
酸不溶性灰分 乾燥減量
14.0%以下
希エタノール
エキス含量
中国ALL 296 2.2±0.4 0.12±0.06 11.6±2.4 4.0±1.4
四川 80 2.2±0.5 0.11±0.03 11.4±2.8 3.6±1.6
甘粛 60 2.1±0.4 0.11±0.02 10.8±2.6 3.6±1.4
貴州 44 2.4±0.3 0.14±0.10 12.8±1.7 4.8±0.9
雲南 24 2.3±0.3 0.16±0.13 11.8±1.2 4.3±0.9
    
灰分
貴州 > 四川, 甘粛 ( p < 0.05 )
雲南 > 甘粛 ( p < 0.05 ) 
希エタノールエキス含量
貴州, 雲南 > 四川, 甘粛 ( p < 0.05 )
貴州 > 雲南 ( p < 0.1 ) 
等級別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)
等級 検体数 灰分
3.5%以下
酸不溶性灰分 乾燥減量
14.0%以下
希エタノール
エキス含量
甲級 34 2.0 ±0.3 0.11 ±0.04 11.9 ±2.3 3.9 ±1.7
乙級 71 2.1 ±0.3 0.11 ±0.05 11.7 ±2.4 4.2 ±1.5
丙級 91 2.1 ±0.4 0.11 ±0.02 11.3 ±2.6 3.9 ±1.6
珍珠 70 2.4 ±0.4 0.13 ±0.10 12.5 ±1.6 4.5 ±1.0
灰分
珍珠 > 丙, 乙, 甲級 ( p < 0.05 )
希エタノールエキス含量
珍珠 > 丙, 甲級 ( p < 0.05 )
その他は有意差無し

内部形態:鏡検

生薬の性状 JP15

本品はやや偏圧された球形~不整形を呈し、径0.7~2.5cm、高さ0.7~1.5cmである。外面は白色~灰白黄色で、上部には茎の跡がくぼみとなり、その周辺には根の跡がくぼんだ細点となっている。質は充実する。切面は白色、粉性である。

本品はほとんどにおいがなく、味は初めなく、やや粘液性で、後に強いえぐ味を残す。

本品の横切片を鏡検するとき、主としてでんぷん粒を充満した柔組織からなり、わずかにシュウ酸カルシウムの束晶を含む粘液細胞が認められる。でんぷん粒は主として2~3個の複粒で、通例、径10~15μm、単粒は、通例、径3~7µmである。束晶は長さ25~150μmである。

Tochimoto-Pinellia-cmt398.jpg

各種比較

半夏 甲級 <中国甘粛省> 天南星
横切面(大きな油道が認められる)
天南星
横切面(油道は認められるが小さい)
Tochimoto-Pinellia-半夏(甘粛・甲級)J.jpg Tochimoto-Pinellia-天南星・横切-1J.jpg Tochimoto-Pinellia-天南星・横切-2J.jpg
束針晶 集晶
Tochimoto-Pinellia-天南星・束針晶J.jpg Tochimoto-Pinellia-天南星・集晶J.jpg
  • シュウ酸カルシウムの束針晶は、半夏、天南星ともに認められるが、集晶は、天南星には認められ、半夏には認められない。なお、中国で天南星として用いられる Arisaema 属植物の塊茎で、集晶が認められないものもある。
  • 横切面において、天南星には油道が認められることが多いが、半夏には認められない。
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