Aritalab:Lecture/Bioinformatics/Stability
From Metabolomics.JP
安定性解析
一般的な微分方程式系を考えます。
定常状態を (x*, y*) とし、そこから少しずれた位置の挙動を調べます。それには (x* + u, y* + v) とした差分 u , v をテイラー展開します。ずれが微小であることから2次以上の部分は無視します。
これを行列の形に書くと
ここで行列 J をヤコビ行列といいます。
ヤコビ行列
線形微分方程式はヤコビ行列 J の固有値 λ1, λ2 を用いた解があります。
- λ1 ≠ λ2 のとき
- λ1 = λ2 = λ のとき
いずれの場合でも以下の議論は同じなため、一緒に扱いましょう。 固有値が実数の時、λ1 < 0, λ2 < 0 であれば、平衡点からの差分 u , v は時間とともに 0 に収束します。どちらかでも正であれば、差分は発散します(つまり線形近似は成り立たなくなります)。 固有値が複素数の時、2つの固有値は複素共役になり λ1, λ2 = a ± i b です。虚数の exp は絶対値が 1 になることを利用して
ですから、固有値の実部が共に負であれば、平衡点からの差分はやはり 0 に収束することがわかります。 この議論は多元連立の場合もそのまま成立します。
まとめると、
- 固有値の実部が全て負であれば、平衡点は局所安定
- 固有値の実部が一つでも正であれば、平衡点は不安定
- 全て正の時は全方向に発散する不安定点 (unstable node)
- 正と負が両方ある場合、方向によって一部収束する鞍点 (saddle node)
となります。固有値が複素数の時は近傍で周期的な挙動(スパイラル)をみせながら収束(安定フォーカス)または発散(不安定フォーカス)します。
Routh-Hurwitz 条件
2 x 2 行列 の固有値実部が負であるための必要十分条件は tr(A) = a + d < 0 かつ det(A) = ad - bc > 0 になります。[1]
- ↑ 2 x 2行列の固有値は λ2 - (a + d) λ + (ad - bc) = 0 という二次方程式の根になります。