Doc:Radiation/Food

From Metabolomics.JP
< Doc:Radiation(Difference between revisions)
Jump to: navigation, search
 
m
Line 1: Line 1:
#REDIRECT [[Doc:Radiation/Natural]]
+
==食品における放射線==
 +
食品における放射線量は、(財)食品流通構造改善促進機構が[http://yasaikensa.cloudapp.net/ Yasaikensaというわかりやすいページ]を作成してくれています<ref>もともとは産業技術総合研究所の川尻耕太郎さんがまとめていたサイトを引き継いでいるそうです。先浜直子様に教えていただきました。ありがとうございます。</ref>。
 +
ここには厚生労働省が発表する野菜等のベクレル数が、セシウムやヨウ素毎に値が出ています。
 +
 
 +
こうした値を大規模・継続的に計測・算出するのは大変な作業で、企業等が簡単に導入・実施できることではないと思います。
 +
 
 +
==お茶==
 +
乾燥茶葉はもともとカリウムを豊富に含みます。カリウム量は文部科学省の [http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm 五訂増補日本食品標準成分表] によりました。
 +
 
 +
{| class="wikitable"
 +
! 食品 || カリウム量 <br/>(g / kg) || カリウムの放射線<br/>(Bq / kg)
 +
!width="45%"| セシウムによる放射線との比較
 +
|-
 +
| 抹茶(乾燥) || 27 || 821
 +
|rowspan="3"| どのお茶も一律にセシウム量が 500 Bq/kg を超えると出荷停止になるのだと思いますが、玉露や抹茶など、お茶は軒並み、カリウムによるベクレル数がすでに 500 Bq /kg を超えています。抹茶や玉露はかぶせ茶といい、日除けをして栽培した茶葉のため、カリウム量が煎茶よりやや多いと思われます。
 +
浸出茶のカリウム量は 300 mg /l 程度です。 1.5 リットル飲んで 0.5 g のカリウムを含み、15.2 ベクレルです。
 +
|-
 +
| 日本茶(玉露) ||  28 || 851
 +
|-
 +
| 日本茶(煎茶) || 22 || 669
 +
|-
 +
| インスタントコーヒー(粉) || 36 || 1094 || 1杯につき粉 3 g 使うとすると、カリウム108 mg を含み 3.28 ベクレルになります。
 +
|}
 +
 
 +
抹茶は和菓子にも使いますが、もともと 800 Bq / kg 以上あります。品種や産地、栽培法による違いもあると思われます。(ただし、カリウムの実効線量係数はセシウムの半分、つまり同じベクレル数でもシーベルト数はおおよそ半分です。)
 +
例えば自主的に放射線検査をおこなうとプレスリリース企業がガイガーカウンターで計測した場合、セシウム由来のベクレル数をどう判断するのでしょうか。
 +
また、通常のベクレル数に 500 Bq 上乗せされたら出荷停止という基準なのであれば、通常値は何ベクレルとするのでしょうか。今はそうした議論が欠けているように思います。
 +
 
 +
;例
 +
セシウムが 800 Bq / kg 混入した茶葉を 20 g 粉にして食べる際のセシウムによる実効線量 (シーベルト数) は、だいたいカリウム 1 g ぶん (例えばトマトジュース 400 ml、焼き芋 200 g、アボカド 1 個分) に相当します。
 +
 
 +
* 茶葉 20g : 800 &times; (20 / 1000) &times; 1.3 &times; 10<sup>-5</sup> = 20.8 &times; 10<sup>-5</sup> mSv
 +
* カリウム 1g : 30.4 &times; 0.62 &times; 10<sup>-5</sup> = 18.84 &times; 10<sup>-5</sup> mSv
 +
 
 +
同じく、荒茶で放射性セシウムが 4000 Bq / kg あったとしても、 4 g を粉にして全部食べる際の実効線量はカリウム 1 g ぶんと同じです。お茶をミルで挽いて粉茶にする人もいるとおもいますが、そうした粉によるお茶 1 杯の目安量は 1 g になっています。線量が 4000 Bq / kg あるお茶を 4 杯分飲んで被曝するシーベルト数は焼き芋 1 本と同じです。
 +
 
 +
飲むお茶(浸出液)のカリウム量は、上記の[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm 五訂増補日本食品標準成分表]によると、玉露で 0.34 g/100 ml, 煎茶で 0.027 g/100 ml になります。浸出法や測定方法は成分表に載っているのでご覧ください。
 +
 
 +
==食肉==
 +
 
 +
食肉に関する移行係数・半減期は、日本草地畜産種子協会による[http://souchi.lin.gr.jp/pdf/news20110629.pdf「飼料から牛肉への放射性物質の移行の考え方」]に記されています。食肉の移行係数は、 day/kg という単位で測られ、以下の式を満たす係数として産出されます。(一定濃度の飼料を長期間食べ続けた際の平衡状態における値として計算します。)
 +
 
 +
<center>
 +
食肉のセシウム濃度 (Bq/kg) = 飼料のセシウム濃度 (Bq/kg) &times; 飼料の摂取量 (kg/day) &times; 移行係数 (day/kg)
 +
</center>
 +
 
 +
植物の移行係数が
 +
<center>
 +
植物体のベクレル数 / 土壌のベクレル数
 +
</center>
 +
という (単位を持たない) 比であるのに対し、食肉の移行係数は一日に摂取するベクレル数のうち体内に保持する割合を示す値になっています。
 +
 
 +
{| class="wikitable"
 +
|+ 食肉の生物学的半減期<ref>Voigt G, Prohl G, muller H, Bauer T, Lindner JP, Probstmeier G, Rohrmoser G (1989) "Determination of the transfer of cesium and iodine from feed into domestic animals" [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/004896978990332X ''The Science of the Total Environment'' 85:329-338]
 +
</ref>
 +
|-
 +
| 種類 || 移行係数 (day/kg) || 生物学的半減期
 +
|-
 +
| 牛乳 || 0.0023-0.0053 || 1.5-15
 +
|-
 +
| 牛肉 (乳牛) || 0.01 || 20-30
 +
|-
 +
| 牛肉 (heifer) || 0.035-0.04 || 50-60
 +
|-
 +
| 牛肉 (牡牛) || 0.03-0.04 || 30-40
 +
|-
 +
| 子牛 || 0.35-0.40 || 25-30
 +
|-
 +
| 豚肉 || 0.35-0.45 || 30-40
 +
|-
 +
| 羊肉 || 0.30-0.35 || 35-40
 +
|-
 +
| 鶏肉 (ムネ) || 1.3 || 18
 +
|-
 +
| 鶏肉 (モモ) || 1.2 || 11
 +
|-
 +
| 鶏卵 || 0.1-0.2 || 2.5-5
 +
|}
 +
 
 +
;例.
 +
2000 Bq/kg の飼料を一日 10 kg 食べ続ける肉牛のセシウム量
 +
: 2000 &times; 10 &times; 0.04 = 800 Bq/kg
 +
 
 +
実際には、セシウムに汚染される飼料は一部分になるので、飼料のセシウム量 (Bq/kg) は平均値になる点に注意してください。
 +
 
 +
表に表れている 牛 < 羊 < 豚 < 鶏 という傾向は飼料効率(肉を 1 kg 増やすのに必要な飼料量)と似ています。
 +
飼料を肉にする効率がよい動物のほうが、(カリウムと間違えて取り込む)セ
 +
シウムの取り込み率も、高いということです。
 +
 
 +
{| class="wikitable" style="float:right"
 +
! 家畜 || 肉 1 kg あたり飼料 || 飼料効率
 +
|-
 +
| 肉牛 || 10 &minus; 11<ref>コープ山口 [http://yamaguti-coop.or.jp/trace/chishiki/trace-chishiki.htm 牛肉の基礎知識]</ref> || 0.1
 +
|-
 +
| 豚 || 3(雑種交配) &minus; 4 (黒豚等)<ref>日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室によるミートジャーナル記事 「[http://www.agr.okayama-u.ac.jp/amqs/josiki/ 肉の常識]」</ref> || 0.25-0.33
 +
|-
 +
| 鶏 || 2.2-2.4 <ref>[http://homepage3.nifty.com/takakis2/youkei.htm 養鶏学コーナー]</ref> || 0.41-0.45
 +
|}
 +
 
 +
 
 +
;参考文献
 +
<references/>

Revision as of 10:58, 24 July 2011

食品における放射線

食品における放射線量は、(財)食品流通構造改善促進機構がYasaikensaというわかりやすいページを作成してくれています[1]。 ここには厚生労働省が発表する野菜等のベクレル数が、セシウムやヨウ素毎に値が出ています。

こうした値を大規模・継続的に計測・算出するのは大変な作業で、企業等が簡単に導入・実施できることではないと思います。

お茶

乾燥茶葉はもともとカリウムを豊富に含みます。カリウム量は文部科学省の 五訂増補日本食品標準成分表 によりました。

食品  カリウム量
(g / kg)
カリウムの放射線
(Bq / kg)
セシウムによる放射線との比較
抹茶(乾燥) 27 821 どのお茶も一律にセシウム量が 500 Bq/kg を超えると出荷停止になるのだと思いますが、玉露や抹茶など、お茶は軒並み、カリウムによるベクレル数がすでに 500 Bq /kg を超えています。抹茶や玉露はかぶせ茶といい、日除けをして栽培した茶葉のため、カリウム量が煎茶よりやや多いと思われます。

浸出茶のカリウム量は 300 mg /l 程度です。 1.5 リットル飲んで 0.5 g のカリウムを含み、15.2 ベクレルです。

日本茶(玉露) 28 851
日本茶(煎茶) 22 669
インスタントコーヒー(粉) 36 1094 1杯につき粉 3 g 使うとすると、カリウム108 mg を含み 3.28 ベクレルになります。

抹茶は和菓子にも使いますが、もともと 800 Bq / kg 以上あります。品種や産地、栽培法による違いもあると思われます。(ただし、カリウムの実効線量係数はセシウムの半分、つまり同じベクレル数でもシーベルト数はおおよそ半分です。) 例えば自主的に放射線検査をおこなうとプレスリリース企業がガイガーカウンターで計測した場合、セシウム由来のベクレル数をどう判断するのでしょうか。 また、通常のベクレル数に 500 Bq 上乗せされたら出荷停止という基準なのであれば、通常値は何ベクレルとするのでしょうか。今はそうした議論が欠けているように思います。

セシウムが 800 Bq / kg 混入した茶葉を 20 g 粉にして食べる際のセシウムによる実効線量 (シーベルト数) は、だいたいカリウム 1 g ぶん (例えばトマトジュース 400 ml、焼き芋 200 g、アボカド 1 個分) に相当します。

  • 茶葉 20g : 800 × (20 / 1000) × 1.3 × 10-5 = 20.8 × 10-5 mSv
  • カリウム 1g : 30.4 × 0.62 × 10-5 = 18.84 × 10-5 mSv

同じく、荒茶で放射性セシウムが 4000 Bq / kg あったとしても、 4 g を粉にして全部食べる際の実効線量はカリウム 1 g ぶんと同じです。お茶をミルで挽いて粉茶にする人もいるとおもいますが、そうした粉によるお茶 1 杯の目安量は 1 g になっています。線量が 4000 Bq / kg あるお茶を 4 杯分飲んで被曝するシーベルト数は焼き芋 1 本と同じです。

飲むお茶(浸出液)のカリウム量は、上記の五訂増補日本食品標準成分表によると、玉露で 0.34 g/100 ml, 煎茶で 0.027 g/100 ml になります。浸出法や測定方法は成分表に載っているのでご覧ください。

食肉

食肉に関する移行係数・半減期は、日本草地畜産種子協会による[1]に記されています。食肉の移行係数は、 day/kg という単位で測られ、以下の式を満たす係数として産出されます。(一定濃度の飼料を長期間食べ続けた際の平衡状態における値として計算します。)

食肉のセシウム濃度 (Bq/kg) = 飼料のセシウム濃度 (Bq/kg) × 飼料の摂取量 (kg/day) × 移行係数 (day/kg)

植物の移行係数が

植物体のベクレル数 / 土壌のベクレル数

という (単位を持たない) 比であるのに対し、食肉の移行係数は一日に摂取するベクレル数のうち体内に保持する割合を示す値になっています。

食肉の生物学的半減期[2]
種類 移行係数 (day/kg) 生物学的半減期
牛乳 0.0023-0.0053 1.5-15
牛肉 (乳牛) 0.01 20-30
牛肉 (heifer) 0.035-0.04 50-60
牛肉 (牡牛) 0.03-0.04 30-40
子牛 0.35-0.40 25-30
豚肉 0.35-0.45 30-40
羊肉 0.30-0.35 35-40
鶏肉 (ムネ) 1.3 18
鶏肉 (モモ) 1.2 11
鶏卵 0.1-0.2 2.5-5
例.

2000 Bq/kg の飼料を一日 10 kg 食べ続ける肉牛のセシウム量

2000 × 10 × 0.04 = 800 Bq/kg

実際には、セシウムに汚染される飼料は一部分になるので、飼料のセシウム量 (Bq/kg) は平均値になる点に注意してください。

表に表れている 牛 < 羊 < 豚 < 鶏 という傾向は飼料効率(肉を 1 kg 増やすのに必要な飼料量)と似ています。 飼料を肉にする効率がよい動物のほうが、(カリウムと間違えて取り込む)セ シウムの取り込み率も、高いということです。

家畜 肉 1 kg あたり飼料 飼料効率
肉牛 10 − 11[3] 0.1
3(雑種交配) − 4 (黒豚等)[4] 0.25-0.33
2.2-2.4 [5] 0.41-0.45


参考文献
  1. もともとは産業技術総合研究所の川尻耕太郎さんがまとめていたサイトを引き継いでいるそうです。先浜直子様に教えていただきました。ありがとうございます。
  2. Voigt G, Prohl G, muller H, Bauer T, Lindner JP, Probstmeier G, Rohrmoser G (1989) "Determination of the transfer of cesium and iodine from feed into domestic animals" The Science of the Total Environment 85:329-338
  3. コープ山口 牛肉の基礎知識
  4. 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室によるミートジャーナル記事 「肉の常識
  5. 養鶏学コーナー
Personal tools
Namespaces

Variants
Actions
Navigation
metabolites
Toolbox