Doc:Radiation/Cattle

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もくじ 基礎知識 自然放射線 人体への影響 胎児と子供 ファイトレメディエーション 土壌汚染 移行係数 食品汚染 家畜汚染 Q&A とリンク

文責: 有田正規 (東大・理・生物化学)   質問、コメント、誤り指摘、リクエスト等は arita@bi.s.u-tokyo.ac.jpまで


Contents

家畜の汚染を防ぐには

2011年7月に入り、牛肉の汚染問題が出てしまいました。基本的には「セシウム除去食」を数ヶ月間与えるだけで対処できる問題であるにも関わらず、東北産の牛肉が危ないというレッテルが張られたのは大変残念なことです。

まとめ
  • 鳥や豚は影響ない
  • 牛や羊は、放射線量が高い地域で放牧しない放射線量の高い干し草を与えない
  • 出荷1ヶ月前に汚染されていない飼料を与えれば、セシウム量は半減する

出荷する前にセシウムを含む飼料を与えないことが基本です。出荷までの期間が短い鳥、豚のように配合飼料を与える場合、通常通り飼育して大丈夫です。放牧したり干し草を食べさせる牛や羊には、出荷の前にセシウムに汚染された牧草を食べさせなければ大丈夫です。


放射線の汚染は数キロ単位で大きく違う

原発から 30 km 以上も離れた飯舘村の土壌が高濃度の放射線に汚染された事実や、高濃度放射線のホットスポットが存在することからわかるように、放射線の値は数キロ単位で大きく異なります。逆に言うと、放射線量をきちんと測れば、数キロ先にはきれいな牧草地、放牧地が存在する可能性が高いということです。

7月に入って報道が相次いだ稲わらのセシウム汚染も、地域によってベクレル数が大きく異なっています。

  • 福島県郡山市 50万ベクレル / kg (原発から 60 km)
  • 宮城県大崎市 1万7600ベクレル / kg (原発から150 km)
  • 宮城県登米市 3647ベクレル / kg (原発から140 km)

放射線量が高い家畜でも数ヶ月で元に戻る

セシウムはカリウムの代替元素として体内に均等に分布し、ヒトの場合 3ヶ月±1ヶ月 でおよそ半分が排出されます[1]。また、プルシアンブルーを与えると、腸内におけるセシウムの再吸収を妨げるので半減期が1ヶ月 (30日) に短縮されます。[2][3] また、イギリスの研究者による論文をみると子羊におけるセシウムの生物学的半減期を 11 日とし[4]、念のために 1 ヶ月きれいな牧草を食べさせて出荷する方法を検討しているので、草を大量に食べる(カリウム摂取量が多い)羊や牛は生物学的半減期もヒトの場合より短いようです。

家畜は屠殺する前でも食肉の放射線量を測ることができます。(筋肉の放射線量を体外から測るだけでよい。) 食肉のセシウム量基準は 500 Bq / kg ですから、体外から測って例えば 300 Bq / kg 以上のものは出荷を延期すればよいだけです。延期後は、できるだけきれいな牧草を 1 ヶ月食べさせればよいでしょう。

ケーススタディ 英国の場合

ヨーロッパではチェルノブイリ事故の影響で 20 年経った今でも放牧する羊を出荷できない地域があります。たとえば英国のウェールズ北部です。ヨーロッパのセシウム出荷基準は日本より緩い 1000 Bq / kg です。羊の放射線量を体外から測定し基準を超えそうなら雨でも落ちない「印」をつけて牧草地に戻す、基準内なら出荷するという措置を続けています。この 「目印放牧」 (mark and release) 方式は、コスト計算をすると

きれいな牧草地のみを利用 < (出荷する市場が限られる場合)市場でチェック < 目印放牧 << 屋内できれいな飼料を与える < 汚染された牧草地を土壌改良

という順になっています[4]。日本で食肉の流通経路をくまなくチェックすることは難しいと思うので[5]、放牧する家畜の放射線量を体外から測定する制度を開始することは有効だと思います。


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