Aritalab:Lecture/Biophysics/Water

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==参考資料==
 
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: Felix Franks の著書、Hasted の著書
 
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;高い相転移エネルギー : 相転移に要する熱量は他の液体に比べて3倍程度あります。また 4度で密度最小という特徴があります。(Figure 4.6)
 
;高い相転移エネルギー : 相転移に要する熱量は他の液体に比べて3倍程度あります。また 4度で密度最小という特徴があります。(Figure 4.6)
 
;高い表面張力 : 表面張力とは 1 m<sup>2</sup>の表面積を追加するのに必要な仕事量を指し、水に接する物質にも依存します。落下中の水滴のように外からの力が加わらない場合、水滴の形は表面張力を最小化して球型になります。水の空気に対する表面張力は比較的高いほうです。
 
;高い表面張力 : 表面張力とは 1 m<sup>2</sup>の表面積を追加するのに必要な仕事量を指し、水に接する物質にも依存します。落下中の水滴のように外からの力が加わらない場合、水滴の形は表面張力を最小化して球型になります。水の空気に対する表面張力は比較的高いほうです。
::表面の形状と面積の関係はヤング・ラプラスの式<math>\textstyle\delta p = \Sigma \big( \frac{1}{R_x} + \frac{1}{R_y} \big)</math>
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::表面の形状と面積の関係はヤング・ラプラスの式 &Delta;p = &Sigma;( 1/R<sub>x</sub> + 1/R<sub>y</sub>)
で与えられます。ここで &delta;p は表面における圧力の差、&Sigma; 張力、2つの R が面の曲率です。この式で圧力差(自由エネルギー)を下げるとRの値が等しい球体になります。
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で与えられます。ここで &Delta;p は表面における圧力の差、&Sigma; 張力、2つの R が面の曲率です。この式で圧力差(自由エネルギー)を下げるとRの値が等しい球体になります。
 
;高い誘電率 : 誘電体は電場に対して分極して絶縁効果をもたらします。原子スケールでは幾つかのモデルが示されています。(式4.7-4.9) 分子の双極子モーメント(分極の度合い)は誘電率にほぼ等しく、水は極めて大きな誘電率を示します。オンサガー(Onsager)によると水(気体)の双極子モーメントは1.8 Debye(デバイ)であるのに対し、液体の場合は水素結合のために 3.0 Debye になるそうです。
 
;高い誘電率 : 誘電体は電場に対して分極して絶縁効果をもたらします。原子スケールでは幾つかのモデルが示されています。(式4.7-4.9) 分子の双極子モーメント(分極の度合い)は誘電率にほぼ等しく、水は極めて大きな誘電率を示します。オンサガー(Onsager)によると水(気体)の双極子モーメントは1.8 Debye(デバイ)であるのに対し、液体の場合は水素結合のために 3.0 Debye になるそうです。
  
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細胞のサイズは 1-100 ミクロンでその中には 10<sup>10</sup>-10<sup>16</sup> 個の水分子が入るはずです。しかし細胞内には細胞骨格がぎっしりはいっており、自由に拡散できない状況です。また他の高分子等に補足された水分子 (bound water) はその振る舞いを変化させます(例えばFig4.10の誘電率)。
 
細胞のサイズは 1-100 ミクロンでその中には 10<sup>10</sup>-10<sup>16</sup> 個の水分子が入るはずです。しかし細胞内には細胞骨格がぎっしりはいっており、自由に拡散できない状況です。また他の高分子等に補足された水分子 (bound water) はその振る舞いを変化させます(例えばFig4.10の誘電率)。
  
分子の拡散現象は細胞内のあらゆるプロセスにおいて重要です。3次元における基本式は<math>\textstyle \langle r^2 \rangle = 6 Dt </math> で r は開始点からの距離、t が時間、D が拡散係数です。小分子が水中を拡散する際の係数は 1 (um)<sup>2</sup>/ms で、1 ms の間に数ミクロン動くことがわかります。バクテリアの場合細胞サイズが 1 ミクロン程度なので分子輸送のようなメカニズムは不要ということです。水自身の拡散係数は 2 (um)<sup>2</sup>/ms 程度です。
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分子の拡散現象は細胞内のあらゆるプロセスにおいて重要です。3次元における基本式は<r<sup>2</sup> > = 6 D t で r は開始点からの距離、t が時間、D が拡散係数です。小分子が水中を拡散する際の係数は 1 (um)<sup>2</sup>/ms で、1 ms の間に数ミクロン動くことがわかります。バクテリアの場合細胞サイズが 1 ミクロン程度なので分子輸送のようなメカニズムは不要ということです。水自身の拡散係数は 2 (um)<sup>2</sup>/ms 程度です。
  
 
細胞内には水以外の分子もあります。例えば食塩は 0.15 M = 2700 ppm の濃度で存在します。食塩は氷点を低下させたり電荷を中和させたりするのに使われます。水も電離します。
 
細胞内には水以外の分子もあります。例えば食塩は 0.15 M = 2700 ppm の濃度で存在します。食塩は氷点を低下させたり電荷を中和させたりするのに使われます。水も電離します。
 
pH の定義は pH = -log<sub>10</sub> [H<sup>+</sup>] です。
 
pH の定義は pH = -log<sub>10</sub> [H<sup>+</sup>] です。

Latest revision as of 11:43, 28 October 2014

Contents

[edit] 参考資料

Felix Franks の著書、Hasted の著書
Martin Chaplinのウェブ資料

[edit] 分子構造と水素結合

水は H-O-H の平面構造をとり、気体および液体の状態で水素の角度は 104.5 度をなします。2つの大きな特徴があります。

  1. O と H の部分で電気陰性度が異なること(水素に偏る微小な正電荷を H と書く)
  2. 2つの H が等価な状態にあること

水素結合のおかげで水分子は離れた位置に電荷を偏らせることができます。例えばNa3PO4を溶かした水溶液はNaを適当な個数だけ乖離させることで pH を調整できます。その時間スケールは 10-14から10-10s です。 水素結合の強さ(自由エネルギー)は液体で 19 kJ/mol 、氷で 54 kJ/mol です。

[edit] 水と氷

氷の結晶構造はX線結晶解析で観測できます。観測によると Figure 4.2 のように酸素が正四面体配置の構造 (tridymite ice I) をとっており、水素結合の角度は 109.4 度になります。水よりも空隙が大きくなるため、氷は水に浮きます。実際は均一の結晶ではなく気泡やヒビなどの影響で多結晶構造になっています。その構造変化は、X線結晶解析におけるスポットパターンが、氷が水に溶けていく段階でぼやけることからわかります。水と氷の状態において、酸素分子間距離における分子数の分布をみると Figure 4.3 になります。水分子が真にランダムに配置していたら、原子の大きさ(ファンデルワールス半径)までは 0 それ以降は 1 になるはずですが、実際は 0.3 nm 付近が極大になります。(つまり取りやすい距離がある。)水を 25 度から 90 度に上げると、5 から 10 % の分子が正四面体から水素結合 2 つの状態になるとする研究結果もあり、水の配位状態は未だに解明されていません。水分子の分子運動は 10-12 s 程度とされています。(細胞内現象の多くは 10-3 s 程度)

[edit] 水の特徴

普通の粘性 
水の粘性はアルコールや他の有機溶媒と同等です(エタノールとメタノールの間)(Table 4.2)
高い蓄熱度 
水はとても高い蓄熱度と(液体にしては)高い熱伝導度を持ちます (Table 4.3)
高い相転移エネルギー 
相転移に要する熱量は他の液体に比べて3倍程度あります。また 4度で密度最小という特徴があります。(Figure 4.6)
高い表面張力 
表面張力とは 1 m2の表面積を追加するのに必要な仕事量を指し、水に接する物質にも依存します。落下中の水滴のように外からの力が加わらない場合、水滴の形は表面張力を最小化して球型になります。水の空気に対する表面張力は比較的高いほうです。
表面の形状と面積の関係はヤング・ラプラスの式 Δp = Σ( 1/Rx + 1/Ry)

で与えられます。ここで Δp は表面における圧力の差、Σ 張力、2つの R が面の曲率です。この式で圧力差(自由エネルギー)を下げるとRの値が等しい球体になります。

高い誘電率 
誘電体は電場に対して分極して絶縁効果をもたらします。原子スケールでは幾つかのモデルが示されています。(式4.7-4.9) 分子の双極子モーメント(分極の度合い)は誘電率にほぼ等しく、水は極めて大きな誘電率を示します。オンサガー(Onsager)によると水(気体)の双極子モーメントは1.8 Debye(デバイ)であるのに対し、液体の場合は水素結合のために 3.0 Debye になるそうです。

[edit] 細胞内の水

細胞のサイズは 1-100 ミクロンでその中には 1010-1016 個の水分子が入るはずです。しかし細胞内には細胞骨格がぎっしりはいっており、自由に拡散できない状況です。また他の高分子等に補足された水分子 (bound water) はその振る舞いを変化させます(例えばFig4.10の誘電率)。

分子の拡散現象は細胞内のあらゆるプロセスにおいて重要です。3次元における基本式は<r2 > = 6 D t で r は開始点からの距離、t が時間、D が拡散係数です。小分子が水中を拡散する際の係数は 1 (um)2/ms で、1 ms の間に数ミクロン動くことがわかります。バクテリアの場合細胞サイズが 1 ミクロン程度なので分子輸送のようなメカニズムは不要ということです。水自身の拡散係数は 2 (um)2/ms 程度です。

細胞内には水以外の分子もあります。例えば食塩は 0.15 M = 2700 ppm の濃度で存在します。食塩は氷点を低下させたり電荷を中和させたりするのに使われます。水も電離します。 pH の定義は pH = -log10 [H+] です。

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