Doc:Radiation/QA
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− | + | セシウムは土壌に降り注いでいるので、植物から食物連鎖の体系に入り込みます。そのため、反芻動物(牧草や干し草が主食)が高濃度に汚染されやすいのです。具体的には、牧場で飼う牛、ヒツジ等が汚染されます。鳥や豚はもともと飼料の中心が(ほとんどが輸入の)穀物です。そのため、高濃度に汚染された地域で'''地鶏などを放し飼いにしていても、配合飼料を与えている限り、セシウムで汚染されることはありません。''' | |
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根津小学校のケースはむしろ、体育館や校舎脇の側溝などにたまった落ち葉を集めることで、校舎全体に降り注いだ放射性物質が集まったと考えるのが妥当です。 | 根津小学校のケースはむしろ、体育館や校舎脇の側溝などにたまった落ち葉を集めることで、校舎全体に降り注いだ放射性物質が集まったと考えるのが妥当です。 | ||
− | * 小学生が校舎周辺の落ち葉を丁寧に集めた | + | * 小学生が校舎周辺の落ち葉を丁寧に集めた (おそらく汚染された土砂も含まれる) |
* 腐葉土になり体積が落ち葉の2∼3割に減少した | * 腐葉土になり体積が落ち葉の2∼3割に減少した | ||
− | 側溝や排水口周辺などが高濃度に汚染されている事実は多く報道されており、その周辺の落ち葉が例えば 300 ベクレル / kg だとしても不思議ではありません。それが堆肥となり 1500 | + | 側溝や排水口周辺などが高濃度に汚染されている事実は多く報道されており、その周辺の落ち葉が例えば 300 ベクレル / kg だとしても不思議ではありません。それが堆肥となり 1500 ベクレルになったと考えられます。 |
− | + | 結論として、'''落ち葉を危険視するのは的はずれです。'''例えば林の中で遊ぶことは、危険ではありません。むしろコンクリート外壁の建物直下にある側溝、排水口など、汚染物質が溜まりやすい部分の除染(水流で洗い流す)をこまめに行うことが重要です。 | |
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+ | また、'''落ち葉を堆肥にすることも問題ありません。''' 福島県では 5000 ベクレル / kg までの地域では稲の作付けをおこなっており、1 件の例外を除いて安全な米を生産できています。堆肥と土を混ぜて例えば 1000 ベクレル / kg の土でトマトやジャガイモを栽培しても、果実が高濃度に汚染されることはなく、販売される野菜と差がありません。([[Doc:Radiation/Agriculture|移行係数]]の項も参照) | ||
Revision as of 10:15, 18 October 2011
もくじ | 基礎知識 | 自然放射線 | 人体への影響 | 胎児と子供 | ファイトレメディエーション | 土壌汚染 | 移行係数 | 食品汚染 | 家畜汚染 | Q&A とリンク |
文責: 有田正規 (東大・理・生物化学) 質問、コメント、誤り指摘、リクエスト等は arita@bi.s.u-tokyo.ac.jpまで
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よくある質問
これまでのよくある質問をまとめました。
- ビタミンCに代表される抗酸化物質(フリーラジカル除去)は放射線防護に効きますか?
効きません。 ビタミンCに効果がないことはよく調べられています[1]。ビタミンC、ビタミンE程度の抗酸化作用では放射線によるDNA損傷は防げません。システアミンは放射線防護作用があることが知られていますが、副作用も強いので摂取してはいけません。
- 家庭用浄水器を使った方が良いでしょうか?
使うことで気分が落ち着く場合は使ってください。 放射性ヨウ素と異なり、放射性セシウムが地下水や水道水に入ることはまずありません。水道水は他の金属類を含め十分に浄化されているため、家庭において放射性核種を除く目的で浄水器を用いる必要はないと考えます。ただし、屋外で川の水や井戸の水を利用する際は、浄水器を使いましょう。(セシウムだけではなく他の物質を除くためにも。)
- 肉や野菜は水に浸してセシウムを除去したほうが良いでしょうか?
生体はカリウムと間違えてセシウムを取り込みます。水に浸してセシウムを除去できるのは事実ですが、同時にカリウムも減ってしまうので、カリウムの摂取量を減らさないように工夫してください。
逆にカリウムの摂取量を増やすことで体内からのセシウム排出を促すことができます。しかしカリウムの過剰摂取も健康を害するため、バランスのよい食事をとることが一番です。発ガンや健康リスクという観点からは、年間 100 mSv という被曝量より運動不足や野菜不足のほうがリスクが高いです。リスク比較については国立がんセンターのページを参考にしてください。
- 玄米を精米した際に取り除けるセシウム量は、玄米と白米におけるカリウム量から推定してよいですか。
はい。 基本的に、カリウム値を基準に考えてよいでしょう。
- 福島県、群馬県、栃木県における高濃度汚染地域は、今のまま長期間住むには適さないのでしょうか。
はい、適さないと思われます。 汚染状況は文部科学省による埼玉県及び千葉県の航空機モニタリングの測定結果 をご覧ください。飯舘村周辺は強制退去になっていますが、福島市周辺や二本松周辺ではそれに近い汚染が見られます。スポット的に高濃度汚染部もあるでしょうから除染をしないで住み続けることは避けたほうが良いでしょう。土壌汚染の項を見てください。除染の基本は「薄める」ことです。
- 牛肉はセシウムで汚染されましたが、なぜ豚や鳥は大丈夫なのでしょうか。
セシウムは土壌に降り注いでいるので、植物から食物連鎖の体系に入り込みます。そのため、反芻動物(牧草や干し草が主食)が高濃度に汚染されやすいのです。具体的には、牧場で飼う牛、ヒツジ等が汚染されます。鳥や豚はもともと飼料の中心が(ほとんどが輸入の)穀物です。そのため、高濃度に汚染された地域で地鶏などを放し飼いにしていても、配合飼料を与えている限り、セシウムで汚染されることはありません。
- 東京でも落ち葉の放射線が高いようです。子供が落ち葉に触れたら危険でしょうか。
2011年10月のAERAでは文京区根津小学校で落ち葉から作成した堆肥が1488ベクレル / kg になったと報道されています。放射線医学総合研究所の元研究総務官、稲葉次郎さんのコメントとして、「3月の原発事故当時に葉がついていなかった落葉樹でも、幹に付着したセシウムが若葉に移行している可能性がある。少なくとも今年は、落ち葉をためたり堆肥を作ったりはしないで、こまめに落ち葉の掃除をしたほうがいいでしょう」と載っています。
木の幹に付着したセシウムが葉に移ることは少ないはずです。移ると仮定すると、都内を含め全国各所で同様の汚染落ち葉が観察されるはずです。しかし、多くの自主的な計測結果を含め、その様な報告は出ていません。
根津小学校のケースはむしろ、体育館や校舎脇の側溝などにたまった落ち葉を集めることで、校舎全体に降り注いだ放射性物質が集まったと考えるのが妥当です。
- 小学生が校舎周辺の落ち葉を丁寧に集めた (おそらく汚染された土砂も含まれる)
- 腐葉土になり体積が落ち葉の2∼3割に減少した
側溝や排水口周辺などが高濃度に汚染されている事実は多く報道されており、その周辺の落ち葉が例えば 300 ベクレル / kg だとしても不思議ではありません。それが堆肥となり 1500 ベクレルになったと考えられます。
結論として、落ち葉を危険視するのは的はずれです。例えば林の中で遊ぶことは、危険ではありません。むしろコンクリート外壁の建物直下にある側溝、排水口など、汚染物質が溜まりやすい部分の除染(水流で洗い流す)をこまめに行うことが重要です。
また、落ち葉を堆肥にすることも問題ありません。 福島県では 5000 ベクレル / kg までの地域では稲の作付けをおこなっており、1 件の例外を除いて安全な米を生産できています。堆肥と土を混ぜて例えば 1000 ベクレル / kg の土でトマトやジャガイモを栽培しても、果実が高濃度に汚染されることはなく、販売される野菜と差がありません。(移行係数の項も参照)
- シイタケを自分の庭で栽培したいのですが、放射線が蓄積されるから危ないでしょうか。
原発事故以前に購入して屋外に放置したシイタケの原木は、雨水に濡れて放射性物質を吸収している可能性があるので使わないほうが良いでしょう。実際、千葉県で露地栽培されたシイタケから基準値以上の放射性物質が検出されています。(ただし、基準値を超えても継続して大量に摂取しない限り、被害はありません。)
これから原木を購入して屋外で栽培する場合は、気にしなくても大丈夫です。(ただし、郡山市や福島市など大気中の放射線量がまだ高い地域においては、念のため、キノコを屋外栽培しないほうが良いと思います。)
- 参考文献・解説
リンク
ここでは個々の学術論文ではなく、大部の報告書や勧告、まとまったウェブサイトへのリンクを掲載しています。
放射線リスク
1. 欧州放射線リスク委員会 (ECRR) による放射線被害に対する勧告 2010 年度改定版。ECRRというのはベルギーに本部を置く市民団体で、研究者や公的機関によるものではありません。
- The Health Effects of Ionising Radiation Exposure at Low Doses and Low Dose Rates for Radiation Protection Purposes: Regulators’ Edition (原発事故に対応し、今なら無料公開)
- ECRR2010翻訳委員会による日本語版
2. IAEA によるチェルノブイリ原発事故の報告書
3. 放射線医学総合研究所による解説。リスクという考え方や影響について大変よくまとまっています。
土壌浄化、ファイトレメディエーション
1. 米国環境保護庁 EPA による、ファイトレメディエーションに関する学術論文の一覧 (英語)
2. サイエンスメディアセンター
放射線データ、放射線の知識
1. 日本の環境放射能と放射線データベース
- 財団法人日本分析センター: 過去40年分の放射線測定情報を利用できます。食品中の放射線も確認できます。
- 放射性物質の測定法 セシウム, ヨウ素, ストロンチウム
2. 特定非営利活動法人 原子力資料情報室(CNIC)
3. 国会答弁、などなど